協会活動
玄米食をMY LIFE STYLEに! 「第1回 玄米食推進フォーラム 2017」開催
2017年12月4日、東京・アーク森ビル37Fのアークヒルズクラブを会場に「玄米食推進フォーラム 2017」が開催されました。本フォーラムは「玄米食をMY LIFE STYLEに!」をテーマに一般社団法人 高機能玄米協会が主催するもので、協会会員社、玄米生産団体のJA、報道各社などから、120名を超える参加者が集まりました。
開会にあたって、主催側の高機能玄米協会副会長・尾西洋次が挨拶に立ち、「このフォーラムを契機に、玄米食に対する従来のイメージを払拭し、食べやすく、おいしく、健康にもいいことをアピールしていきたい」と、フォーラム開催の意義や目的を述べました。
その後、来賓挨拶として農林水産省 政策統括官付穀物課 課長補佐の那須慎吾氏からのメッセージが代読され、フォーラムがスタートしました。
一般社団法人 高機能玄米協会 副会長 尾西 洋次
基調講演「現代に適応した玄米食考」淑徳大学 看護栄養学部 栄養学科 教授 桑原 節子 氏
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第一部では初めに淑徳大学 看護栄養学部栄養学科 教授・桑原節子氏が登壇。「現代に適応した玄米食考」と題する基調講演を行いました。
桑原教授はまず、主宰するゼミの学生を対象にした玄米食に対する調査結果を紹介。その中で、ほとんどの学生が玄米食に対して「食生活に対していい影響がある」と回答したものの、「食べ続けられると感じた」のはわずかだったことが明らかにされました。また、約30%の学生に味覚障害の疑いがあり、それは食べやすさやコストを重視した食品摂取の影響ではないかと、現代人の食生活に警鐘を鳴らします。
そこで、味覚障害に陥った現代人の食生活を改善するために、桑原教授は主食を玄米に替えることを提案。玄米を食べることでよく噛む習慣をつければ、適量で満足感・充実感が得られるほか、免疫力アップ、アレルギー減少、生活習慣病予防にもつながるといいます。
次に、高機能玄米「金のいぶき」を摂取すると、どのように体調が変化するかを調べた学生の卒業研究を披露。その研究から玄米食は白米摂取時に比べ、排便回数や排便量が増加することが分かりました。白米と比べ食物繊維が7倍以上含まれている「金のいぶき」が、腸内環境の改善や腸蠕動運動の促進効果をもたらし、排便促進につながったことが明らかになったといいます。
さらに、玄米のような精製度の低い穀類は食後血糖値の上昇を妨げるなど、高血糖予防になるほか、植物性の食事は脂質代謝・高血圧予防になるといいます。玄米食をきっかけに食習慣の改善を図り、健康維持・向上に努めることが重要だと桑原教授は締めくくりました。
桑原 節子 教授
玄米食導入事例動画上映とバラエティに富んだ玄米食レシピ紹介&試食会
おいしく、簡単に炊ける人気の玄米「金のいぶき」を導入した飲食店や学生食堂の現場の声を紹介した映像が映し出されたあとは、株式会社金のいぶきで管理栄養士、フードプロデューサーを務める葛西佳奈氏から、10品に及ぶ玄米食レシピが紹介されました。
「玄米新時代 ~金のいぶきが拓く新しい玄米食~」
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金のいぶきのおいしさ、炊きやすさ、栄養価の高い点が評価され、さまざまな飲食店、学校給食、社員食堂や中食用として導入されていること。
さらには金のいぶきを使用した商品の研究開発もすすめられていることを提供する立場の方、召し上がる立場の方、利用する立場の方、食育の立場の方などのインタビューを通して金のいぶきの広がりを映像でご紹介しています。
フードプロデューサー 葛西 佳奈 氏
引き続いて会場隣に用意されたスペースでは、実際に参加者にその10品を振る舞う試食会を開催。「金のいぶき」を使ったおにぎり、トマトリゾット、ヒレカツとコールスローの巻きずし、玄米粉を麺にした冷麺、玄米味噌の味噌汁、全粒粉を使ったバナナケーキ、甘酒と、豊富なメニューに参加者たちは目移りしながら、試食を楽しみました。
玄米食を中心に懇談の輪が広がる和やかな雰囲気の中、参加者に試食の感想を伺うと、「おにぎりからデザートまであって、驚きました」「工夫されたレシピで食べやすかった。これなら玄米食も抵抗がないですね」「麺にも加工できるなんて意外、おいしかった!」といった声が返ってきました。
導入事例や調査研究から玄米食を考える
第二部では、基調講演を行った桑原教授を座長に、4人の方が登壇し、それぞれ異なるフィールドでの玄米食の導入事例や調査研究について発表が行われました。
●知的障害施設における便秘解消に玄米を導入湯沢市福祉事務所 皆瀬更生園 主査 栄養士 佐藤 由美子 氏
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「金のいぶき」の生産地である秋田県湯沢市。同市の障害者支援施設「皆瀬更生園」で栄養士を務める佐藤由美子氏からは、2017年2月22日~5月22日の90日間にわたって、施設利用者の食事に「金のいぶき」を導入したモニタリング調査について発表がなされました。
調査は1日3食のうち1食を玄米食とし、昼食または夕食として提供。食事摂取状況と排便や血圧のモニタリングを実施しました。なお、玄米食には食べやすさを考慮し、金のいぶき20g+あきたこまち50gを混合したものを利用したといいます。
結果は、玄米食への抵抗は少数にとどまり、便秘症の利用者については排便回数の増加、高血圧症の利用者については血圧降下が認められたことが明らかにされました。さらに、定期健康診断の血圧、血中脂質、血糖などの項目における有所見者数が減少したことも、玄米食導入による影響ではないかと示唆します。
玄米の生産→新たな産業創出→食生活の改善→健康増進という健康で豊かな「湯沢型循環社会」を目指す同市の取り組みに会場から拍手が湧きました。
佐藤 由美子 氏
●パーキンソン病患者を対象に提供される「ブラウン食」とは国立刀根山病院 栄養管理室 室長 村井 一人 氏
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大阪府豊中市にある国立病院機構刀根山病院 栄養管理室室長の村井一人氏からは同院におけるパーキンソン病治療への取り組みについてご紹介いただきました。
村井氏は、パーキンソン病治療の新境地を切り開いた同院の院長である佐古田三郎氏の考え方を披露。佐古田氏によれば、「神経変性疾患のパーキンソン病は一般に脳神経の異変から始まると考えられがちだが、実は腸から発症が始まっているのではないか」とのこと。神経回路を通じて腸と脳は結びついており(腸脳相関)、乱れた生体リズムを回復させ、食生活を見直すことでパーキンソン病の症状を改善できるという「佐古田メソッド」が紹介されました。
パーキンソン病患者の食生活を健常者と比べた研究では、脂質および炭水化物の摂取量が多いことが明らかになっており、食物繊維を多く含む野菜や海藻、きのこを多く含む食事を取ることがポイントだと、村井氏は述べます。
その健康食を、玄米や味噌汁などの色に例えて「ブラウン食」と呼び、刀根山病院で提供されているメニューが写真とともに紹介されました。
村井 一人 室長
●玄米の摂取が女子大生の便通や睡眠の質を改善宮城学院女子大学 食品栄養学科 教授 農学博士 正木 恭介 氏
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宮城学院女子大学 食品栄養学科の教授・正木恭介氏は、仙台市の小学生から高校生までの健康実態調査をもとに、男子は高学年になるにつれ便秘傾向が減少するのに対し、逆に女子は高学年になるにつれ便秘傾向が高まることを指摘します。
そこで正木教授からは、指導する女子大生を対象に「金のいぶき」の摂取と精神状態の変化や排便について調査した結果を報告していただきました。
調査は、便秘傾向を自覚する学生を対象に実施。玄米を摂取するグループと白米を摂取するグループに分け、夕食時に同量のごはんを摂取して、排便や不安との因果関係を調べました。結果は、玄米を摂取したグループでは排便が改善され、不安の自覚症状が減少したことが有意な差として表れたといいます。
そこで、正木教授からは女子の児童・生徒・学生の便秘や不安の自覚症状解消のために、学校給食や学生食堂のメニューに玄米を取り入れることが提案されました。
正木 恭介 教授
●学校給食における玄米食の導入と今後の期待学校法人渡辺学園 東京家政大学 附属女子中学校・高等学校 給食室
栄養教諭 管理栄養士 村上 まさ子 氏
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東京家政大学附属 女子中学校・高等学校で、給食室栄養教諭を務める管理栄養士の村上まさ子氏からは、同校の給食に「金のいぶき」を導入した事例を紹介していただきました。偶然、正木教授が提案した実施例となっただけに皆さんも興味深く耳を傾けていました。
導入の背景には、給食のメニューを工夫しても食物繊維が不足しがちだったことがありました。主食を玄米にすることでその問題を解消し、栄養バランスの整った食事を提供したいという思いから導入を決定。ただ、給食ではガス釜で大量に炊飯する必要があり、おいしく炊き上げるために前日から玄米のみ浸漬を行うなどの工夫したことも明らかにされました。
玄米食は2016年10月の試験導入を経て、翌月から本格導入を開始。毎週金曜日に2種類の魚料理から選べるセレクトメニューの際に、玄米ごはんが提供されています。
村上教諭は、単に玄米食を提供するだけでなく、食育という立場から玄米食のメリットを周知することにも力を入れ、家庭に配布する献立表をはじめ、ランチルームのテーブルには卓上食育メモを置くなどの創意工夫を行っていることを強調。学校給食を「生きた教材」として食育を行ううえで、和食を見直す手段に玄米食を使用することは合致していると述べられました。さらに、炊飯しやすい玄米の生産・流通が整えば、学校給食の全国的な展開が可能になると期待を寄せていると締めくくりました。
村上 まさ子 教諭
熱気にあふれる報告が続いた第二部が終了すると、高機能玄米協会事務局長の日浦拓哉氏が閉会の挨拶に立ち、「玄米食普及を加速させていくためにも、生産者、加工業者、消費者、研究者など、玄米食に関わるすべての人々が出会い、世の中に向けて発信していく場として、今後もこのフォーラムが継続、発展していくことを期待します」と抱負を述べ、本フォーラムは盛会のうちに終了しました。
一般社団法人 高機能玄米協会 事務局長 日浦 拓哉
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